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2009年12月

あたし、多重債務者をダマしてるの・・・

 友達の友達のK子は不思議な職場で働いていることが多いという。数年前していた仕事は電話の受け付け嬢だったのだが、普通の会社じゃない。

「具体的に言うと、どういう仕事内容なの?」

「お金が借りたくて借りたくてしょうがない人ばっかり電話してくるの。」

「消費者金融?」

「そんな感じ。電話がかかってくると、まず名前とか個人情報を聞いて、『ちょっと審査させて下さい』て言って適当に待たせるわけ。」

「ふんふん。」

「次に『だいぶ焦げ付いてますよね、○○さん。』て優しく言うの。」

「実際には審査してるの?」

「してない」

「・・・。」

「で、『ウチとしても出来るだけ融資してあげたいんですが、やっぱり信用がないと・・・』って言って、まずはお試しで1万円だけ貸すのね。」

「へぇ、貸しちゃうんだ。」

「うん。で、一週間後に1万3千円にして返してもらうの。信用づくりのための1万3千円ね。」

「で、ちゃんと返済してきたらどうするの?」

「なかなか審査を通らないとかそんなようなことを言って、なるべく何度も1万円を借りてもらうの。あんまりゴネてきたら、出来るだけのことはしたけど無理だった、って言っておしまい。」

「・・・それ、・・・サギだよね?」

「でも、ギャンブル中毒の人とかって結構何度でも借りてくれるんだよね。」

「全然“でも”じゃないし」

 誰かに懺悔して楽になりたかった、という感じでK子は言った。

あたし、多重債務者をダマしてるの・・・」

「わかってんじゃん」

 K子は普通にイイ子なので、そんな仕事とは知らずに応募したらしかった。後日K子の職場は警察の手が入り、ツブれたという。

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真夏の夜の夢

 アムロがまだブイブイいわしてた頃、知人のT君が原宿の有名なヘアサロンに行った。ドレッドヘアのメンテで時間のかかっていたT君に美容師が言った。

「もうすぐ隣にアムロちゃん来るよ。」

 そう聞いた途端、T君の脳裏に一週間ほど前の夢がフラッシュバックした。

(以下夢)

 夏、T君の実家にアムロが遊びに来ている。
 実家は古い日本家屋で庭に面した窓は開け放たれ、炎天下にもかかわらず室内は涼しい。軒下に吊った風鈴がたまにチリンチリンと鳴る。

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 T君もアムロも縁側に腰掛けて涼んでいる。二人ともごく自然にくつろいでいる風なので、どうやら自分はアムロと付き合っているのだなとT君は思う。
 母親が麦茶を持ってきてくれた。
 アムロが遠くを見ながら言う。

 「今まで24歳って言ってたけど、本当は26歳なの・・・」

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 縁側に置かれたグラスの氷が溶けて、カランと鳴った。

 母親がT君に諭すように言う。

 「女は歳じゃないのよ。」

 T君はなんとなくグラスを揺らしながら思う。

 「歳じゃないよな・・・」

(夢終わり)

 程なくしてT君の隣にアムロが来た。T君の緊張はいやがうえにも高まる。正夢か、はたまたドッキリか?(←どっちも違うと思うのだが、タイミング的にそう考えてしまうのも無理はない。)
 ただ、ひとつ注意しなければいけないのは、T君はアムロがドギマギしてしまうような甘いマスクの男ではないのだ。しいて言えばスーパーマリオのルイージに雰囲気が似てる。

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 T君は自分の髪型が整うまでチラチラ隣を見ていたが、無論何も起こらなかった。

 しかし、後日芸能ニュースでSAMとの電撃離婚が報じられると、T君の脳裏にまた甘い妄想が湧くのだった。

 (以下妄想)

 散歩をしているT君とサングラスをかけたアムロがすれ違う。振り向きざま、アムロはT君の背中に声をかける。

「あの、もしかして・・・」

 サングラスを外しながら、アムロは続ける。

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「いつだったか、原宿のヘアサロンで隣になった方…ですよね?」

 T君の鼓動が早まる。T君は内心で大いに納得する。

(あの時の夢はやっぱり正夢だったのか!!)

(妄想終わり)

・・・・・・・・・・・・ない。・・・・・・・・・ない。

先日、そんなお茶目なT君と知り合いました。

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スプラッター讃岐うどん

 その日の夜遅く、吉祥寺にある讃岐うどんの専門店「吉祥寺麺通団」に行った。ここはセルフのうどん屋の中では屈指のうまさを誇る店で、ワンコインで食べられる手軽さもあり、最近ひいきにしている。店の前に張り出されているメニューの前で、どれにしようか迷っていると目にとまった一品があった。
「めんたい釜たまうどん」
釜揚げうどんに生卵と明太子を混ぜたものだ。

 店に入り、オーダーを告げると、
「茹で上がるまで少々お時間頂きますのでレジで精算してお待ち下さい」
とのこと。
 レジの前で財布を取り出すと、片鼻の奥からツーーーという涼しげな感覚がして、次の瞬間、ポタポタポタポターーーーーと鼻汁が滴り落ちてきた。慌てて手を当てると掌が真っ赤に染まっている。鼻血だった。鼻をほじっていて出たりすることはたまにあるが、この時は全く何もしていない。

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 片手で鼻を押さえながら、もう一方の手で鞄の中をごそごそとまさぐりハンカチを探すがなかなか見つからない。そうする間にも鼻血は後から後からとめどなく出てくる。
 手近な席にあった紙ナプキンをまとめてつかみ、鼻に当てがうと、レジの店員が異変に気づいておしぼりを持ってきてくれた。店員にしてみれば、入ってきていきなり鼻血を出す客に対応したことがないのだろう(そうそうあってたまるか)。自分より店員の方が混乱している風だった。

「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。っていうか、なんで鼻血出たのか全然わからない・・・」

自然に出る鼻血というと、興奮して出るものと相場は決まっている。ヤラシイ妄想などが鼻血の引き金としては一番思い浮かびやすいだろう。ついそんな風に思われたくなくて、妙に言い訳じみたことを言ってしまう。

 もしくは、店員から
「この客、500円のめんたい釜玉うどんに興奮して鼻血出してる・・・」
と思われたらこんなに不名誉なこともないが・・・。

 なんとか支払いを終えて席で待っていると、めんたい釜たまうどんとおしぼりが二つ運ばれてきた。苦境にある人間にはこんなささやかな優しさが身に染みる。
「おしぼり使ってください」
店員は鮮血に染まったおしぼりで鼻を押さえながらうどんをかき混ぜている人間を興味津々といった顔で見ている。
「なんで出たのか全然わからないんですよね・・・」
またしてもそんなセリフが口をついて出る。黙っていると勝手に色々想像されそうなので「ほんとに偶発的な事故なんですよ」と念を入れて強調しておきたかった。

 もしくは「外で殴り合いのケンカでもした直後にうどんを喰おうとしている食い意地の張った奴」とでも思われたら心外だ。でも、どこの世界に殴られて鼻血を垂らしたままうどんを食いに来る奴がいるのか。
 何だか店中の好奇の視線が気になって落ち着かないので、鼻にティッシュを詰めてうどんを一気に啜り込むと店を出た。
 めんたい釜たまはかすかに血の味がした。

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5パー引くだけ

 大工であるJの朝は早い。毎朝6時頃には家を出て、帰宅は9時か10時。大工の日当は坪単価で支払われるのだが、ここ数年で3~4割も下がった。原油高で輸入建築資材の値が高騰したり、折からの不景気でとにかく家が売れない。ゼネコンはコスト削減を主に人件費の切り詰めによって進めている。だからとにかく働けるだけ働いて件数をこなさないと稼ぎにならない。
 家には小学校低学年の娘を筆頭に、2歳、6ヶ月と3人の子供がいる。今住んでいるマンションを出て家を買いたい気持ちもあるので、週にたった1日の休日も返上して働くことすらある。酷使し過ぎた腕が腱鞘炎になり、腰もあんまり痛むので接骨院に行ってみたら、
「普通の人、この状態で歩けませんよ」
と言われた。

 そんなわけでJはその日曜日も疲労困憊してぐったりしていた。
 そこへ嫁さんの兄さんから電話がかかってきた。たまたま近くまで来たので寄るという。義兄はガソリンを湯水の如く消費するハマーでCO2をバリバリまき散らしながらやってきた。

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 この義兄、地域のケーブルテレビ会社に長いこと勤めており、今ではかなり偉いポジションにいるという。彼の話によればマルチのような構造で新規加入者から掛かってきた電話を下請けに回すだけで粗利が入る仕事なのだとか。
 義兄はJがいかに苦労して金を稼いでいるか聞いた後でカラカラと笑いながら言った。

「Jちゃん、おれの仕事はね、5パー引くだけ。」

Jは突然目眩がして深い眠りに落ちていった。

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脳内流行歌

 最近よく聴く歌の中に「そして僕は途方に暮れる」という曲がある。20年近く前のスカした流行歌をハナレグミがカバーしたもの。オリジナルは大沢誉志幸。 
 頻繁に聴いている曲って勝手に頭の中でループしちゃうことがあるさね。そういう具合に生活の中で度々流れるんです。それは例えば、大根おろしついでに手が滑っておろしが血に染まった時、軍歌を大声で歌いながら散歩するおっさんとすれ違う時、尋常でなく変形したチャリを前にした時などの緊張状態に際して流れては微妙なヒーリング効果をぼくにもたらす。

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 今日も渋谷の立ち食いそば屋で一回流れた。腹が減っていたので、何も考えずにその店に入った。飯時は過ぎているものの、渋谷の駅ビルの中なので客足は一向に衰えない。客は入り口にあるレジのおばちゃんに注文を告げて代金を払い、おばちゃんはよく仕込まれた九官鳥のように厨房にそれを伝えるのだが、その言い方が笑える。

「てんせいろ」

「かもなんばん」

「ひやしたぬき」

 書き表せないのがもどかしいが、とにかくハキハキと棒読みで注文を繰り返すだけなのである。事情を知らない人が聞くと「こいつ気でも触れたか?」というような光景。おそらくこの店の長年の試行錯誤の中で編み出された注文伝達テクニックなのだと思う。

 それはそうと、僕は特盛りを頼んだ。5秒ぐらいでたっぷり2.5人前はある特盛りが届いた。ひとりTVチャンピオンか?いまだかつてこれほどの量のそばが一人前のざるに盛られているのを見たことはない。そんな猟奇的とすら言えるボリュームである。つゆの器とネギのセットが有無を言わさず二人前ついている。食べる前からまずそうだ。

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 黙って食べ始めたが一人前を食べたあたりで満腹になってきた。辺りを見回すとちょうど前の席におろしそばを食べ始めた働き盛りのサラリーマンがいる。しかも大柄な男だ。立ち食いそばの一人前は成人男子の一食分には若干足りない。そこで、瞬く間に食べ終えた男に話しかけた。

「よかったらこのそば、食べてくれませんか?」

 男はいきなり他人に話しかけられて怪訝な表情である。

「この世知辛い世の中で、タダでそばを?なんでこの俺に?」

と目が言っている。特盛りを頼んだがとても食べきれない量なので、と説明したが、男の不信感は拭いきれずあえなく断られた。絶対一口ぐらい欲しかったはずなのに、世間体とか気にしやがってアホウが。「こっちまだ箸つけてませんよ」とか「自分はただ食べ物を残すのが忍びないだけ」などと弁解じみたことを言っても食べてはくれなかったろう。なぜだ?立ち食いそば屋でそのガードの堅さが何の役に立つというのだ?

 何かをやり遂げることの素晴らしさを伝えたがる人から、「あともう少しじゃないか!」と励まされそうなわずかな量を残して、ギブアップした。
 他の客たちは次々と完食しては仕事だか待ち合わせだか買い物へとでかけていく。小学校の給食で嫌いな食べ物がでて、いつまでも食べ終われない子供のような置き去られ感。

 入り口のおばはんは相変わらず

「なめこおろし」

「ざる」

「わかめうどん」

と注文を復唱している。渋谷の街をF1のサーキットとすれば、さしずめこの立ち食いそば屋はピットのようなものだ。不足した燃料を補給するためだけの場所。
 店員がテキパキと働き、数秒で駄そばが運ばれ、客は忙しなくそばを手繰り、平らげた者から黙って出ていく。

 そしてぼくは途方に暮れる。

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嫌いな色

 「なんか面白いことないかなー」と思っていた夜更け。突如、けたたましいエンジン音がマンション下の道路から聞こえた。ベランダから下を覗くと二人乗りのビッグスクーターがちょうど止まったところだった。

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 4階建てのマンションの3階に住んでいるのだが、一階がコンビニでベランダから見下ろす道はコンビニの裏手にあたり、不要な段ボールやゴミをストックしておくスペースがある。コンビニに近く、適当なスペースがあり、マンション入り口の階段がベンチ代わりになるので色んな人が“たまる”場所だ。
 日中であれば外回りの営業マン、近所の現場で働いている大工、左官屋、ガードマン、ネズミ取りのお巡り、昼間からワンカップを飲む場所を探しているアル中、コンビニで買ったジャンクフードを食う部活帰りの高校生、同じマンションに住んでいる金髪の女子高生とその悪友など。
 これまで観察してきた“たまる人々”はバラエティに富んでいる。こっちも出不精なのでヒマを持て余してそんな人たちを観察してることが多い。2階の高さまでなら道を歩く人の視野に入るが、3階から上はあえて見上げないと目に入らないようだ。堂々とベランダから覗き込んでいても大きな音を立てない限り、気づかれる心配はない。

そこでベランダから身を乗り出して下を見てみると・・・

女:「わざわざ送ってくれてありがとう。それじゃ・・・」

女がバイクの後ろから降りてヘルメットを脱いだ。さらさらのロングヘアがダメージケアシャンプーのCMさながらにほどけて肩にかかった。真上からのアングルなので顔はよく見えない。が、それが一層覗き見の想像力をかき立てる。辺りが静かな分、昼間なら聞こえない普通の話し声が狭い路地に反響してよく聞こえる。
男は慌ててヘルメットを脱ぐと言った。

男:「あ、ちょっと飲み物買ってくるよ。何がいい?」
女:「え?」
男:「ちょっとだけ話さない?ここだったらちょうどいいし」

「万が一ムードが良くなった場合にはキスもできるしな」と心の中でつっこみを入れた。女はただ「いいトモダチ」に送ってもらったつもりだが、男の方はこれを機になんとかして関係を密なものにしたいと思っているに違いない。そんながぶり寄りモードのオーラが男の全身から漂っている。

女:「じゃあ冷たいお茶。」
男:「OK」

男は軽い足取りでコンビニへ去っていった。
「カモがネギしょってやってきたぞ」
 覗きがいのある二人が登場してくれてうれしい。

 男は戻ってくると他愛もない世間話をはじめた。話を聞いていると二人は大学生で何らかの軟派系サークルの先輩後輩という関係らしい。ところがこの男というのが実に煮え切らない奴で、話が冗長で異常につまらない。話下手だから何とか間を持たせようとして女にあれこれ取るに足らない質問をするのだが、そのレスポンスを突破口にして敵陣深く切り込んでいくことが全くできないので、いつまでたっても会話のボルテージは上がらず、老人ホームの茶飲み話のごとく盗み聞きしていてもちっとも面白くないのである。

 女は根がやさしい性格なのか、退屈している様子がありありと見えるのにもかかわらず「じゃあ帰るね」の一言がなかなか言えず、とうとう体を掻き出した。しかもいろんなところを掻いている。つきあって長い二人や同棲しているカップルの女が体を掻いているなら話は別だが、女がそれほど親しくない男の前で体をポリポリ掻いているのは明らかに相手のことが眼中にないというサインだろう。相当退屈しないとこのリアクションは出ないと思う。

 男はそんな女心がまったく読めないようで、雑誌かテレビの受け売り丸出しの「ダイエット成功の秘訣」みたいな、今ここでする必要の全くない薀蓄トークを展開している。聞いていてだんだんイライラしてきた。よっぽど女に、
「『つまんないから帰る!』って言っちゃえ」
などとけしかけたかったが最後まで見届けようと踏みとどまった。何しろ相手のことは何も知らないのにこちらの居所だけが知られて、しかも恨まれるというのはかなり怖いシチュエーションだ。つい数日前も夜中にたむろしているガキがあんまりうるさいので、ベランダから水をかけて隠れたところ、室内の電気がついている部屋が自分の部屋しかなかったので、「あそこじゃね?」とバレて肝を冷やしたばかりなのだ。幸い大事には至らなかったが。 

 男は今度は占いの話をはじめた。女の手をとって「これが運命線で云々」などと言いながらいつまでも触っている。多分さりげないスキンシップによって「親密さアップ!」とか思っているのだろう。もういい加減、当事者以上にイライラしていたぼくは何とか一矢報いるチャンスはないものかと虎視眈々と身構えていた。

 すると、男は今度は「深層心理のテストをしてあげる」と言い出した。

男:「ところで嫌いな色をひとつだけ挙げるとしたら何色?」

(今だ!)おれは夜道に浮かび上がる男の愛車・黄色いマジェスティを見ながら、大声で叫んだ。
「黄色!」

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レモンティー事件

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「紅茶にレモンかミルクをおつけしますか?」

 ウェイトレスにそう訊かれた時、随分昔の記憶が脳裏をよぎった。小学校五、六年ぐらいの「レモンティー事件」のことだ。

 人間の力関係は歳とともに変わっていく。一般的に言って小学校低学年ぐらいでは腕力、気の強さなどの最も原始的な強さがものを言う。中学年ぐらいになると運動神経やユーモアのセンスが人望を左右し、女の子からもモテる。高学年になると人柄、色気、ファッションセンスなどへと移り、さらに成長していくうちに学力や経済力、才能、地位、とその基準はどんどん現実的になっていく。

 その事件は小学校5年の夏頃におこった。体育でプールに入った後のこと、男子更衣室に一枚のパンツが落ちていた。学校にアコースティックギターを持ってくる熱血教師がその場でパンツを振りかざし、

「このパンツ誰のだー?」

と訊くのだが、そんな状況で自分のだと名乗り出られるほど日本の子供社会は甘くない。何しろ大便一つしても冷やかされるような小学校でのこと。結局誰も名乗り出ることはなかった。
 目ざとい誰かが言った。

「なんかそのパンツ、黄色いシミついてるよな」

 その一言を受けてクラスの男連中は騒然となった。小便ちびりの犯人は誰かと魔女狩りの様相を呈してきたのである。

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おまけに教室へと戻る途中で新たな証言が飛び出した。

「Sは着替えてる時にパンツを履いてなかった。」

 Sは低学年時から抜群の運動神経と野原を駆け回って育った野生児ぶりとで知られるいじめっ子の一人だった。Sに対する長年の恨み辛みが多くの男子の中に燻っていたこと、Sの体格が他の男子に比較してあまり成長しなかったこと、みんなの価値観が個人の体力信仰を脱して多様化していく過渡期であったことが絶妙にリンクして、一人の少年の口を開かせた。

「・・・レモンティー」

 人混みの中から誰かがそう呟くのが聞こえた。その呟きは水面に波紋が広がるように男子の心を次々と虜にしていった。

「レッモンティー!」

「レッモンティー!」

(アクセントは前に置き、尻上がりに)

 あちこちから声が上がるようになると、もう誰もSの報復など恐れてはいなかった。全ての男子が「レモンティー」の大合唱に参加していた。すなわち、下剋上が起きたのである。

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 その時のSの様子がどうだったかは覚えていない。さすがにあまりに痛々しくて見ていられなかったような気がする。実際そのパンツがSのものだったのか、黄色いシミが本当についていたのかすら定かではない。集団心理の恐ろしさをまざまざと思い知らされた事件だった。

 少年時代の苦い記憶から我に返ると、ウェイトレスがキレ気味に言った。

「レモンかミルクは?」

「レモンを」

 確かにそう言ったはずだが、数分後に運ばれてきたのはミルクだった。ミルクティーを飲みながら、かつてレモンティーと呼ばれた男の今を想った。

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沖縄の掟

 友達の沖縄人Mくんはその日給料日で、これから“模合(もあい)”の集まりがあるのだと言う。 
 沖縄には模合(もあい)という風習がある。一言で言ってしまうと、金銭的相互扶助システム。
 メンバーが定期的に集まって一定の金額を出し合い、その集まったお金を毎回一人ずつ順番に使っていくという仕組みだ。お金を使う人を入札で決めるなど、模合(もあい)ごとにいろいろ取り決めがあるそうだ。本土でいう無尽講、頼母子講(たのもしこう)。

 例えば、ある人たちは毎月給料日になると各々1万円ずつを徴収され、もらう順番はその時急ぎでお金が要る人を合議によって決定し、基本的に一番先に貰った人はまたケツへまわるという感じ。
 同年代のメンバーで行うのが普通で、金額は子供だと数百円から。若者は旅行や引っ越し資金などに使い、お年寄りになると葬儀や入院費に充当されることもある。上流階級の模合では一口数百万なんてこともあるとか・・・。借用書を交わしたりするようなことはなさそうなので、沖縄のように限定的なコミュニティーやメンバー間に絶対的な信頼関係があることを前提にしたシステムなのだろう。

 で、少し模合について話をしたあとで、ふと気になったことを訊いてみた。

 「それさ、大金貰って使うだけ使ったら逃げちゃう人いないの?」

 お人好しで有名なMくんは、沖縄の美ら海を見るような澄んだ瞳で言った。

 「でも、そいつもう島帰ってこれないよね。」

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おかど違い

※過去記事を転載しているため、季節感など現在に合わないことがあります。

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 人通りの多い吉祥寺駅のロータリー付近で、一人のおばさんが道行く人に何やら訴えている。手には細かい字で埋まったノートの切れ端を持ち、たまにそれを見ては余すところなくメッセージを伝えようと声を振り絞っている。
 湿度90%を超えるうだるような暑さの中を通行人はみな苛立たしげに、ザッ、ザッ、ザッと軍隊の行進のように歩いて行く。たまに歩きながらおばさんの話に耳を傾ける者もいるが、怪訝な表情を浮かべながら通り過ぎていくばかり。
 何しろ最近のひどい暑さにこの湿気だ。非人情だと彼らを責めるわけにもいくまい。他者に無関心な群衆の中でおばさんだけが一人懸命に熱いメッセージを投げかけている。
 何を言っているのかと、ゆっくりおばさんに近づいてみる。

「・・・私の娘がJTBの窓口で働いてるんですが・・・つきあっている相手というのが財力にモノをいわせて・・・人身売買ですよ。これは犯罪です。娘をどこの馬の骨とも知らない輩に売り飛ばそうとしてるんです・・・・」

 人身売買とは真っ昼間から穏やかじゃない。ここでもまた都会の無関心が一つの事件を闇に葬り去ろうとしているのかと暗澹とする。

「警察は事件にならないと動かない」
「初動捜査のミス」
「民事不介入」

などとマスコミが警察の不手際を責める時の決まり文句が頭をかすめる。
おばさんの話は続く。

「・・・聞いてください。これは紛れもなく犯罪なんです。・・・それからこんなこともありました。いきなり娘の後をつけてきて・・・車で拉致したんです。私はこんな男を断じて許すことはできない。そう思って今日ここにやってまいりました。是非みなさんのお力をお借りしたい。その一心でこうして話し続けているのです。・・・そもそもその男と娘のなれそめと申しますのが・・・・」

 おばさんのマシンガントークは止むことがない。
 が、話が本当ならどうして街頭で通行人相手に訴えているのか。通行人に何を期待しているのか?
 おばさんの20メートル先には交番があり、中には手持ちぶさたなお巡りが二人もいるのに。話が本当にせよ、虚言にせよ、不特定多数の他人に漠然と助けを求めるその状況判断のまずさに呆然としてしまう。十中八九おばさんの被害妄想だろう。

都会の人はかしこい。こんな話に耳を傾けてはいけない。

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特異体質

 もてない男がお見合いパーティーに参加することになった。会場に着いて、くじ引きで決まった席に向かうと、向かいの席に目の醒めるような美人がやってきた。
 男はその瞬間、雷に打たれたかのように一目惚れしてしまった。

「いやぁ、高い会費を払って来た甲斐がありました。あなたのように美しい女性と同じテーブルを囲めるなんて本当に光栄です」

男は手のひらをズボンで拭うと、女に差し出した。
女は顔を赤らめて俯いた。

「私、ちょっと手がヌルヌルしてるんで・・・」

「ははは、多汗症ですか。私も汗かきですから全然気にしませんよ」

男はそれぐらいのことで赤面してしまう女のことを益々好ましく思った。

「いいえ、本当にダメなんです」

女はかたくなに握手を拒む。

「あなたは今時なんて奥ゆかしい人なんだ。誰も手汗なんて気にしませんよ、ははは」

男は強引に女の手をとった。
途端に男の口が半開きになる。
二人が握り合わせた手の間からジョッキ一杯分ほどのゲル状の物体が床に落ちた。

ベチャ Photo

 

唖然として棒立ちになっている男に、女は言った。

「私、手からこんな分泌物が絶え間なく出てくる奇病なんです。こんな女、誰だって嫌ですよね…」

女が嘘をついていない証拠に、その足下には浜辺に打ち上げられたクラゲのように分泌物のかたまりがいくつも落ちている。

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「…ちょっとぼくに時間を下さい」

男は力なく肩を落とした女の傍らで、いまだかつてこれほど想像力を使ったことはないというぐらい懸命に彼女との結婚生活をイメージした。

「はい、おかわり」と渡される茶碗がヌルヌル。

抱擁するたびに服がヌルヌル。

炒め物には水溶き片栗粉を使わなくても常にとろみがついている。

新聞や本のページがくっついて読めない。

家電製品やパソコンが故障する。

よく乾いた洗濯物がたたむそばから濡れていく。

子供がいじめられる…etc.

そうして生活上の困難を考え得る限り詳細に想像した。
やがて男は意を決して言った。

「ぼ、ぼくは大丈夫です。そんなところも含めてあなたの個性なんですから」

女の目から涙がこぼれた。

 男の熱意に打たれて話はトントン拍子に進んだ。エンゲージリングがはめたそばからずり落ちたが、男は正式にプロポーズし、女の母親に会うことになった。

「母は高齢のためにもう視力がほとんどないの」

家に入ると、車椅子に乗った母親が出迎えてくれた。
母親は二人のそばまで来て言った。

「お婿さんがどんな人だか、私に見せておくれ」

母親は両手を前に差し出し、男に触れようとした。

「ちょっとお母さん、失礼よ」
「いや、いいんだ。お義母さんに少しでもぼくのことを知って欲しいんだよ」

男は自分の顔を義母の前に差し出した。彼女の両手が男の顔を撫で回した。

「ああ、この人はいい人だよ。あたしゃ、目が利かなくなってから触っただけで何でもわかるんだ」

やがて母親の気が済むと、男はヌルヌルになった顔で言った。

「アンタもか・・・」

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秘かな告白

「じゃ、おつかれー」

土井健一は、仕事を終えて駅へ向かう同僚と別れると、オフィスビルの地下駐車場へ続く階段を駆け下りた。タイムカードを押した時からクソがしたかったのに、同僚から長い愚痴を聞かされ、その間ずっと我慢していたのだ。階段を下りたところにあるトイレは、他のフロアと違って滅多に人が入らず落ち着いて用を足すことが出来るので、大の時はいつもここを利用することにしている。

 すっきりしてトイレットペーパーを巻き取っていると、ほんの30センチ使ったところで紙が途切れた。最後までなくなったのか確かめようとペーパーホルダーのフードを開けると、やはり紙切れだった。わずかな紙を大事に使った後で、腹立ち紛れに芯を叩いたら、芯の中のバーもろとも床に落ちてしまった。
 バーを拾ってはめ込もうとした時、健一は妙なものを見つけた。ホルダーのフレームが固定されている壁に、シャーペンの細い字でこう書かれている。

“吉田真由美を会社で犯してしまった”

健一はその落書きをしばらく凝視してから首を傾げた。
 落書きというのは普通、人に見せるために書くものだ。たとえ相愛傘や下ネタのように、メッセージ性の低い落書きであっても、書いた人間は必ずそれが人目に触れることを想定している。そうやって自分の存在や考えを世間に知らしめたいのだ。ヒマを持て余し、社会から顧みられない人間ほど落書きをしたがるのはそういう理由による。もしその落書きが自分以外の人の目に触れないとわかっていたら、心の中でつぶやくのと何ら変わりはない。誰がそんな無意味なことに労力を使うだろうか。
 だから健一はそれをただの落書きだとは思わなかった。ペーパーが固定されている間は、つまり通常は、トイレの利用者から見えない位置にあり、ペーパーが切れてホルダーバーを外した時だけ人目に触れるようになっているからだ。それにしても、なぜこんな人目に触れにくい場所に書いたのだろう、しかもマジックでなく、消えやすいシャーペンで。

 健一はこう推理した。このオフィスビルに勤める誰かが、職場の同僚の吉田真由美を深夜残業時かなにかにレイプした。男が女の上司だったとか、女が精神的に参ってしまい警察に届け出なかったなどの理由で事件は表沙汰にはならなかった。しかし、レイプした男はその秘密を自分の胸にしまっておくことができなかった。警察に自首するようなつもりはなくとも、誰かに言いたいという衝動を抑えきれなかったのだろう。「王様の耳はロバの耳」のような話だ。被害者も加害者もごく身近にいる。おそらくこのオフィスビルのどこかの会社に勤めているはずだ。それが健一の読みだった。

 次の日から健一の吉田真由美探しが始まった。こうしている間にも被害者は誰にも言えない心の傷を抱え、地獄のような日々を送っているかもしれない。そう考えると、健一は自分が助けてやらねばと燃えてきた。といっても内容が内容だけに、表だって名前を公表するような探し方はできないので、まず被害者のプロファイリングから始めることにした。
 それにしたって姓も名も実に平凡で年齢も容姿もまるでわからない。ただレイプ事件の被害者だということしか手がかりしかない。一体、吉田真由美とはどんな女なのだろう。健一は考え込んだ。

 巨乳ないしスタイルが良く、男を無意識のうちに誘惑してしまうような、いわゆる“男好きのする”女?

 若く美しい女?

 露出度の高い服装をした女?

 獣の柄の服や靴、カバンを身につける女?

 メガネをかけた女?

 健一はAVでもレイプものが大嫌いなので、レイピストがどんな女をターゲットに選ぶかがわからなかった。そこで同僚の中でも最も性欲の処理に困っていそうな部下に訊いてみることにした。

「なあ、北野、お前もし罪に問われないとしたら、どんな女を犯したい?」

北野は会社のシステム管理者でパソコンオタク。ために休日も部屋でネットばかりしていて彼女いない歴=年齢という男だ。ファイル共有ソフトで落としたエロ動画だけで新品のハードディスク250GBが即満杯になったというのは職場では有名な話だった。

「土井さん、いきなり何てこと訊くんですか」と面食らいながらも、北野は嬉しそうに言った。

「そうですねぇ。ツンと澄ましてる高飛車な女がいいですね。仕事なんかヘタな男よりできちゃって男からすればちょっといけ好かない女。プライドが高くて、職場の飲み会なんか行かないような。それでいて無茶苦茶美人でナイスバディーなんですよ、それこそ女王蜂のようなメリハリのある体で・・・」

「ありがとう。もういいや。なんかありきたりだなぁ。AVの見過ぎじゃないのか?コンプレックスも男の支配欲も丸出しだって」

北野はいくらかオチたようだった。

「ウソウソ。気にするなよ。やっぱりそれが大方の男のロマンなのかなあ。小さいなぁ、男。」

健一はいつか見たレイプもののAVで男優が、「男をなめんじゃねえ!」と女優を罵倒しながら激しく腰を使っていたシーンを思い出した。

 トイレの一件以来、健一は機会があるたびに周囲の人間に似たような質問をしたが、捜査は一向に進展しなかった。そこで新しい視点を取り入れるために、女にも訊いてみることにした。ごく親しい友人の女に事の顛末を話して聞かせた。

「まず、ビルの中に勤めてる人じゃないよね、犯人は。」

話を聞き終わるとすぐに彼女は言った。

「ふーん。それはどうして?」

腕組みをしてここではないどこかを見つめながら彼女は言った。

「だって、そのトイレはビルの地下駐車場から1階に上がってくる途中にあるんでしょ?自分のオフィスがビル内にあるなら、会社の同僚もそのトイレを使うことがあるじゃない。筆跡とか職場の人間関係からすぐ犯人がバレちゃうでしょ」

「・・・なるほど、そりゃそうだ。じゃあ・・・一体、誰なんだ・・・」

健一の読みが甘かったことがわかり、捜査は暗礁に乗り上げた。

 トイレであの落書きを見てから、早3カ月が過ぎようとしていた。健一はもともと非常に飽きっぽい性格で一つのことに長時間集中できない性格なので、もうほとんど例のレイピスト探しのことは忘れかけていた。

 そんなある日のことだった。仕事帰りに件のトイレに立ち寄ると、入り口に清掃中の看板が置いてある。健一は、「すみません」と言いながら入ってしまった。

「どうぞどうぞ。床滑りますから気をつけて下さいね。」

 愛想のいい掃除のおばちゃんだった。緑のユニフォームを着て丁寧にモップを掛けている。

健一は沈黙が気詰まりになって話しかけた。

「おばちゃんさ、吉田真由美なんて人、知らないよね?」

そう聞くなり、彼女は弾かれたように顔を上げ、つかんでいたモップを床に落とした。健一も驚いて彼女を見返した。胸元につけられた名札に「吉田(真)」と書かれている。

健一は驚きの余りファスナーを閉めるのも忘れて、おばちゃんに駆け寄った。

「ひょっとしてあなたが吉田真由美さん?ずっとあなたを探してたんだ!」

思わず彼女の両肩をつかんでしまった健一。
 おばちゃんは年甲斐もなく顔を赤らめ、健一の股間をじっと見ている。健一は我に返り、慌ててファスナーを上げようとした。

「おしっこした後でも大丈夫よ、いいのよ、うちは。」

と言っておばちゃんの手がファスナーをつかむ健一の手に被さってきた。

「いいのよ、ってこっちは嫌なんだよ!放せ!」

おばちゃんはこの小さな体のどこからこれほどの力が、というほどの馬鹿力で健一を引きずると個室に入った。必至の抵抗を続ける健一におばちゃんは頭突きを見舞うと、勢いよく鍵を閉めた。

シャコーン

無情な響きがトイレ中にこだました。床に倒れ込む途中、狭まっていく視界の隅に例の落書きが見えた。

“吉田真由美は会社で犯してしまった”

 健一はこの期に及んでようやく自分の致命的なミスに気がついた。“を”と“は”を読み違えていたのだ。

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Road to 漢(おとこ)

 最近自分の侠気(おとこぎ)の無さにげんなりしていたぼくは、高円寺に男の中の男がやっているバーがあると聞いて、その「バーボンハウス」なる店に向かった。

 もう冬だと言うのに、店のドアは男らしく全開に開け放たれていた。 店に入ると、マスターは暗いカウンターの中で一瞬顔を上げたように見えたが、無言だった。

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“そうだ、それでいい”

 ぼくは内心でそう呟きながらうなずいた。本物の漢(おとこ)は冬でさえドアが開いていることなど気にもしないし、笑顔の安売りなどもってのほかだ。

 店の壁にはプロジェクターから映画「ジョーズ」が投影されている。 バーボンハウスという店名に従ってバーボンをたのんだ。郷に入れば何とやらだ。

 マスターと二人きりの店内に、ジョーズに襲われて呆気なく喰い殺されていく人たちの絶叫がこだまする。 この特異なシチュエーションでどういう顔をしてはじめてのバーボンを飲めばいいのか・・・

 やがて琥珀色のバーボンが運ばれてきて、一番入り口に近い席でちびちびとなめるように飲み始める。 トイレに立つと、中には30年前ぐらいの精力剤のポスターが貼ってある。

 しばらくして、映画もクライマックスにさしかかった頃、黄色いヘルメットをかぶった作業員が店に入ってきて、

「申し訳ありませんが、これから前の道でガス管の工事を始めます」

とぼくに言った。とりあえず、

「がんばってください」

と返した。

 すると、すぐにドガガガガガと大きな音が響き渡った。 すぐにマスターが立ち上がり、こちらへゆっくり歩いてくる。

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 工事の人に不用意な言葉をかけたぼくに怒っているのかと思い、びびっていると、マスターは開いていたドアを黙って閉めた。

カウンターに帰っていくマスターの背に、

「どうしてジョーズなんですか?」

と訊くと、マスターはカウンターの上から何かを取ってぼくに放り投げた。

それは店のライターだった。

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ぼくはマスターの目を見て黙ってうなずいた。

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全開でムコダイン

 前回からの続き。内科→耳鼻咽喉科→内科と行ってみたが、どこでも風邪と診断された。が、やっぱり納得いかない。心の中のおやじみたいな奴が、「これ、絶対風邪じゃねーだろ」とぼやいている。

 不安になって今度は呼吸器科に行ってきた。いくつもの医者を渡り歩いてジプシーのような気分。待合室でゴフゴフ咳してるだけで、周りから白い目で見られる。インフル流行りのご時世だから仕方あるまい。

 診察中にもゲホゲホ咳き込んで痰が吐きたくなったので、ティッシュをくれと言うと、渡されたのがこれ↓

Photo_5

思わず、ヒィッ!と叫んで手から落とした。

製薬会社のやつなんだけど・・・・。ね、何をアピールしたいの?歯医者さんに置いてあるならまだしも・・・怖いよー!!。このデザインにGOサインを出した奴の顔が見たい。

「これ・・・いくらなんでも全開で笑いすぎですよね?」

と看護婦に同意を求めるも、聞こえなかったのか、冷たく無視される。

 そして、レントゲンやら肺の検査やらアレルギー検査で1万円もとられた末に下された診断は、

「喘息ですね。アレルギー性かも」。

ガーン!、健康には自信あったのに・・・

 そして、痰を切りやすくする薬として、ムコソルバンより少し格上のムコダインを処方される。ムコダインもかなり頼もしい名前だ。帝人ファーマの薬はネーミングセンス最高!そして、喘息患者しか持てない例の吸入器をゲット。

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ナメック星人の持ち物みたいでちょっとアガる。

 チャリで帰る途中にふと下を向くと、チャックが全開!ただの1ミリも閉まってない。最後にトイレに行ったのは家を出る前だったからずっと全開だったことになる。してみると、病院での冷たい視線とか、看護婦の態度とかが全て腑に落ちた。

 シャイな看護婦は、あのティッシュで「アンタも全開だよ!」と教えてくれていたのか・・・

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「全開よ!」

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「全開なのよ!(私もあなたも)」

ってゆーことだったのかー!!!

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医療ミスとムコソルバン

 一ヶ月前からしつこい風邪をひいている。

 新型インフルだなんだと物騒な御時世なので、すぐに内科に行った。インフルだと高熱が出るらしいので、すぐに熱を測らされる。

「36.5C!はい、ただの風邪ー」

 老医師に笑って秒殺診断を下され、やたらといろいろ薬を処方された。薬の中にムコソルバンという痰を出しやすくする薬があり、たのもしげな語感がやたらと気に入る。これを飲んでいれば大丈夫だという気がする。なんとなく。そのため、他の薬をサボることはあってもムコソルバンだけは欠かさず飲んだ。

 けれども2週間ぐらい安静にして薬を飲み続けたが、一向によくならない。それに症状がどうもおかしい。ただひたすら痰が出続けるだけで、のどの痛みや咳、鼻水など風邪の諸症状が一切ないのだ。

 風邪というのは誤診で、実はもっとタチの悪い病気なのではないか?という疑念が脳裏をよぎった。

 そこで今度は目先を変えて耳鼻咽喉科に突撃となりの晩ご飯。

「あ、風邪ですねー」

 耳鼻咽喉科よ、おまえもか。おまえもそんなに簡単に判断するのか・・・内心不満たらたらだった。

「でも、痰がひっきりなしに出るだけで、鼻水も喉の痛みも熱もないんですよ」

「“そういう種類の”風邪です。お薬は、痰を出しやすくする・・・」

「ムコソルバンですね?」

知ったかぶりして間髪入れず言うと、医者が少し驚いた。一矢報いた気がした。

 その後、一ヶ月たってもまだ治らないので、今度はまた別の内科に行った。

「風邪だと思いますが、不安なら痰の検査とレントゲンを撮りましょう。」

レントゲンは問題なし。痰の検査結果は後日出るということで薬をもらって帰る。今度もやはりムコソルバンが入っている。

 一週間後、ポストに病院からの封書が入っていた。確か、検査結果を聞かされるためにもう一度出向かなければいけなかったはずなのに・・・

!!ひょっとして重大な医療ミスが判明して、口頭ではショッキング過ぎて言えないような深刻な病名が書かれていたりして・・・

で、こわごわ封を開けると、

Photo_4

医療ミスは医療ミスでも医療“事務”ミス・・・

“さて” じゃない!

結局、検査の結果は問題なく、やはり風邪らしい。ちなみにまだ痰は出続けている。

まだしばらくはムコソルバンの世話になるしかない。

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