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6分の4

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世の中には特異な性癖を持っている人たちがいる。セックスにおけるドSもしくはドMというのは中でも非常にわかりやすい例だろう。自分にあったパートナーを探すだけでも出逢いの場が限られてくるだろうから、難儀なことだと思う。

 ところが知人の話によると、そうでもないようだ。Aさんは「おれの友達のB君の話なんだけどね・・・」という前振りで話し始めた。 ぼくは「うん」と何気なく頷きながらも少し目を細めた。

 B君にはこれまで付き合った女性が6人いて、その内4人までがパートナーを拘束するためのマイ手錠を所有していたという。B君がネット上のコミュニティかなにかでドSの女性を探したり、そういった人達が集まるクラブで知り合った女性が手錠を持っていたというのなら何も不思議はない。

 そうではなくて、実はB君は付き合うまでに自分がドMであることをカムアウトせずに、ごく普通の馴れ初めで、つまり何となく相手に惹かれてつきあい始めたのだという。人の直感というのはあなどれないものだ。偶然にしては確率が高すぎるから、欠けているものを持っている相手が直感でわかるのだろう。これは何もSM嗜好だけに限らず、性格的な面でも心当たりのある人が多いことだろう。

 ところで、B君はこの性癖のためによく困難な状況に直面する。ある日、プレイ中に女がMさんに掛けた手錠の鍵を鍵穴に挿したまま折ってしまった。もちろんわざと。折れた鍵は切断面が釣り針の「戻り」のようにつっかえて振っても出てこない。B君がいかなドMといっても、これには困った。翌日も仕事があるのだ。

「おいおい、遊びもいい加減にしてくれよ。仕事があるから金を稼げて呑気にこういう遊びにふけることができるんじゃないか」

とB君は持ち前の卑屈さで許しを請うた。ドMなので間違ってもキレたりはしない。女がカーストでいうバラモンならB君はシュードラ。思い切り背伸びしてもこれぐらいのセリフが関の山なのだ。

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「ん?なに?もう一度言ってみな」

女はB君のケツをピンヒールでグリグリしながら、美しい黒髪をかきわけて片耳をB君に向けた。

「仕事があるから・・・」

とB君が言いかけると、「その前!」という言葉と同時に女の持った便所用のスリッパがB君の頬を打った。

「い、痛い・・・。」

「“痛いです”!」

「あ、はい。痛いです。」

「“あ”は余計」

「はい。痛いです。」

「“遊びもいい加減にしてくれよ”って、お前今まで“遊び”であたしの貴重な時間をつぶしてたのか?」

と女はこんな具合に散々いじめた挙げ句、空も白み始めた頃になってしぶしぶホームセンターでチェーンソーを買ってきて、手錠の鎖を切断したという。切断できたのはあくまでも鎖なので、その日は手錠をぎりぎりまで上に引き上げ、スーツの袖に手錠を隠しつつ仕事をし、夜になってそのようなトラブルシューティングに詳しい先達のところに行ってやっと解錠できたという。

 またある朝、B君が目を覚ますと、両手がベッドのフレームに手錠で固定されている。女はそのまま仕事に行ってしまい、B君は夜になるまで飲まず食わずで女を待ったそうな。

 一通り話を聞き終えた後で、ぼくはそれとなくAさんを観察した。「あとちょっと痩せるだけなのに」という中途半端な小太りで、初対面の人には横柄だが、実は優柔不断で芯の弱い性格。相手が強気に出るとすぐ卑屈になってモジモジする。
 Aさんは吉田戦車の「いじめてくん」を連想させる。なぜだか理屈では説明できないが、無性にいじめたくなるキャラなのだ。

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 ぼくはAさんにカマかけてみる。

 「で、手錠プレイは気持ちよかった?」

 彼はノータイムで言った。

 「うん。・・・あっ!」

 「何で最初から自分の話だって言わねーんだよ。」

 ぼくはB君ことAさんの頬をひっぱたいた。

 Aさんはひっぱたかれた頬だけでなく、逆の頬も赤く染めた。

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