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よくそのへんにある危機

 

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 駅のホームに降りると、ちょうど電車が行ったばかりだった。本を読もうとベンチまで歩いて行くと、ベンチのすぐ横にゲロがあった。そこから一番離れた席に座って本を開いた。
  電車到着のアナウンスを聞いて顔を上げると、ぞっとするような光景が目に飛び込んできた。さっきのゲロのすぐ前に若い女の子が立っている。ケータイをいじるのに夢中で至近距離にゲロがあることに全く気づいていない。ホームにはちらほら人がいて、女の周りだけ結界が張られたように人が寄りつかないのを見れば、他に気づいている人もいるはずなのに、誰も教えてやる気配はない。
 これがいわゆる「都会の無関心が悲劇を生むケース」なのだなと思って立ち上がった時、そこの前を急ぎ足のサラリーマンが通り過ぎた。女の足が反射的に半歩下がった。もうゲロまで1センチほどで一刻の猶予もない。
 ぼくはその場で女に怒鳴った。
「危ない!もっと前!」
 女が弾かれたようにケータイから顔をあげ、後ずさりした。
 女は足元の地獄を見て、ぼくは神を呪って天を仰いだ。

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