« 2012年4月 | トップページ | 2012年8月 »

2012年5月

見知らぬ母へ

 5月14日、母の日のこと。友達のM(女の子)が体験した話。

 

 とある田舎から東京に戻ろうと駅に向かう途中で、味のある木造の個人商店を見かけて覗いていくことにした。部屋に飾ろうと買ってきた大きな鉢植えを店先に置かせてもらい、中に入った。

 腰の曲がったお婆さんが奥から出てきた。日用品から駄菓子までなんでもあるようなよろず屋。昔懐かしい駄菓子を見ていたら、どこにしまってあったものか、遠い日の思い出がふつふつと湧き上がってすっかり温かい気持ちになった。

 後ろで戸が開いた。

「あんらぁ~、届いてんでねぇの、見てみぃ」

 振り向くと、店主と同じ歳頃のお婆さんが皺だらけの顔で笑っている。店主の顔にぱっと華が咲いて、嬉しそうに外へ出て行く。

「ほんにまあ、母の日だのなんも言わねぇんだもの。電話一本ぐれぇ寄こすもんだ」

 何だろうと思って外に出て見た。

「男の子だから恥ずかしいんでねぇか」

「まったくいくつになっても」

 二人は鉢植えを見ながらニコニコしている。息子からのプレゼントだと勘違いしているらしい。Mはそんな二人を前にして「自分のです」とも言えず、けっこう値の張ったそれをそのまま置いてきた。そして、その名も「メロンコリー」という駄菓子を買って帰ってきた。

 願わくは真相が明るみに出ませぬよう。

| | トラックバック (0)

« 2012年4月 | トップページ | 2012年8月 »