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2012年8月

ヤバい割烹

  友達の高校時代の先輩に無鉄砲かつ武闘派で鳴らした先輩がいた。20人に3人でケンカをしかける、波打ち際で人の頭だけ出して砂に埋めてしまう、所持金120円でパスポートも持たずに成田空港に行き、「飛ぶんだァ!」と叫び、職員に羽交い絞めにされる、などと武勇伝には事欠かないヤバい先輩。
 そんな先輩がある晩、高級割烹に忍び込んで鮮魚を盗み食いしていたところ、板前たちに捕まってしまった。全く反省の色のない先輩を前にして板前の一人が通報の手を止めた。かくして先輩は猿轡と縄で拘束された挙句、物置の中に監禁されることになった。それから数日間、その割烹の板前たちのサンドバッグとして殴る蹴るの暴行を受けた。
 先輩が解放された時、片眉と片側の頭髪がきれいに剃り落とされていた。

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密命

 友達の通っていた女子高は1クラス50人で一学年が22クラスの超マンモス校。毎年夏休みが終わるたびに生徒が減り、三年の卒業までに計5クラス分が中退するというステキな学校。
 ある日の朝礼で教頭が言った。
「一組の◯◯さんと担任の◎◎先生が数日前から行方不明になっています。二人の消息をご存知の方は教えて下さい。また、このことはくれぐれも内密に願います。皆さん、何卒ご協力お願いします。」
 生徒たちがざわめいた。
 なんでもその女生徒は担任の若い男性教諭(新婚)にずっと手作りの弁当を差し入れ、大変な熱の入れようだったのだが、ついに駆け落ちしてしまったのだという。
 教頭の捜索指令は、そのまま事態が長引いて事件化することを恐れた学校側の苦渋の決断だった。
 数日後、生徒たちの緊密なネットワークにより彼女は学校に戻ったが、噂は即刻校外に漏れ、おもいっきり事件化したという。

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事務の才能

 友達の職場にビーサンで通勤している筋金入りの粗忽者(40歳)がいるという。
 ある日、上司が彼に10冊分のファイリングを頼んだ。
「タイトルは適当に考えて通し番号振ってくれればいいから」
 彼が「終わりました」と報告した後、キャビネットには「◯◯◯◯(彼の氏名)No.1」から順に「◯◯◯◯(彼の氏名)No.10」というタイトルのファイルが整然と並んでいたそうな。

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お熱い二人

 友達の彼氏は典型的なDV男。外ではにこにこと笑みを絶やさずノーと言えないお人好しだもんで、そうして溜め込んだストレスを彼女にぶつけてしまう。ために彼女はこれまで眼底骨折、腎動脈剥離という大怪我を負っており、腎機能を損ねたせいで激しい運動ができず、今も薬を飲み続けている。
「それでも別れないんだ?」
「一度、奴が浮気した時に別れたんだけど、やっぱりアタシがいいからって」
 浮気の発覚は彼女が彼の部屋で見知らぬブラジャーを見つけたのがきっかけ。彼女は即座に浮気相手を呼び出すと、道路に二人を土下座させて交互に蹴りながらブラジャーを粉々に切り刻んだ。
 それでも怒りは収まらず、デートの現場に二人を連行して綿密な現場検証を開始。ある公園では、ベンチに刻まれた二人のイニシャルを見えなくなるまで紙やすりで削らせた。
「…アンタも相当なもんだね」
 この彼女、車にビニール傘を何本も積んでおいて、雨が降ると他人に分け与えるほどのお人好し。
「そんなのまだかわいいもんだよ。だってアタシ、自分から別れようって切り出したことがあるの」
 命の危険を感じるほどの大げんかで彼女は彼の顔を包丁で切りつけたのだが、彼は彼女をかばって病院に行かなかったため、今でも大きな切り傷が二本残っており、カタギの仕事につけないという。
「『もう別れよう。このままだとアタシいつかあんたを殺しちゃうから』って言ったんだけど、それでもいいからって」
 そのいきさつを聞いた彼女の弟が言った。
「姉ちゃんと付き合えるのはあいつしかいないよ」
 彼女はその時、彼とは一生添い遂げるしかないと決心した。
 二人の一生が人並みの長さであることを祈るしかない。

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1と2と3

 友達の通っていた女子高は1クラス50人で一学年が22クラスの超マンモス校。毎年夏休みが終わるたびに生徒が減り、三年の卒業までに計5クラス分が中退するというステキな学校。中でも校舎の端に隔離された一組から五組までは生粋のヤンキーだけが集められたクラス。
 その選抜クラスで夏休みの迫ったある日、授業の合間の休み時間にそれは始まった。
 突然、ビキニ姿の生徒が教室に飛び込んできて言った。
「これが1ね!」
 声が明るく弾んでいる。一瞬の沈黙の後、教室中が騒然となった。彼女はモデルのように教壇の端まで歩くと出て行った。隣の教室から「これが1ね!」という声が聞こえた。数分後、別のビキニを着た彼女が戻ってきた。
「これが2!」
 同じように歩いてから出て行く。
 数分後、また別なデザインのビキニを着て戻ってきた。
「これが3!」
 他の生徒たちの会話から、彼女がデートに備えて友達に水着を持ち寄らせたのだとわかる。 
「1が良かった人ー」
 何本か手が挙がる。
「2が良かった人ー」
 声のトーンがいくぶん落ちた。
 また何本か手が挙がる。
「3が良かった人ー」
 声のトーンがだいぶ落ちた。
 何本か手が挙がるが、全部合わせても全体の三分の二に満たない。
 授業開始のチャイムが鳴った。
 顔をしかめた彼女がドスの利いた声で言った。
「どれにも手挙げなかったやつー」
 誰も手を挙げない。
「おめえら、ナメてんのか、あ?」
 その時、教師が入ってきた。

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