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お熱い二人

 友達の彼氏は典型的なDV男。外ではにこにこと笑みを絶やさずノーと言えないお人好しだもんで、そうして溜め込んだストレスを彼女にぶつけてしまう。ために彼女はこれまで眼底骨折、腎動脈剥離という大怪我を負っており、腎機能を損ねたせいで激しい運動ができず、今も薬を飲み続けている。
「それでも別れないんだ?」
「一度、奴が浮気した時に別れたんだけど、やっぱりアタシがいいからって」
 浮気の発覚は彼女が彼の部屋で見知らぬブラジャーを見つけたのがきっかけ。彼女は即座に浮気相手を呼び出すと、道路に二人を土下座させて交互に蹴りながらブラジャーを粉々に切り刻んだ。
 それでも怒りは収まらず、デートの現場に二人を連行して綿密な現場検証を開始。ある公園では、ベンチに刻まれた二人のイニシャルを見えなくなるまで紙やすりで削らせた。
「…アンタも相当なもんだね」
 この彼女、車にビニール傘を何本も積んでおいて、雨が降ると他人に分け与えるほどのお人好し。
「そんなのまだかわいいもんだよ。だってアタシ、自分から別れようって切り出したことがあるの」
 命の危険を感じるほどの大げんかで彼女は彼の顔を包丁で切りつけたのだが、彼は彼女をかばって病院に行かなかったため、今でも大きな切り傷が二本残っており、カタギの仕事につけないという。
「『もう別れよう。このままだとアタシいつかあんたを殺しちゃうから』って言ったんだけど、それでもいいからって」
 そのいきさつを聞いた彼女の弟が言った。
「姉ちゃんと付き合えるのはあいつしかいないよ」
 彼女はその時、彼とは一生添い遂げるしかないと決心した。
 二人の一生が人並みの長さであることを祈るしかない。

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